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2020年3月 限定SS 『初遭遇/アクセル』カラミア・キリエ・アクセル
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「……」
何もせず、ベッドに仰向けになりながら天井をただただ見つめる。
無趣味な自分が見つけた、時間の潰し方だ。
(……ボス達は何をしているのだろう)
――先程、かすかに聞こえた話し声が気になる。
この屋敷の壁は厚く、会話が筒抜けになることはないが。
こうして沈黙の中にいれば、聞き逃しそうな音も耳に届く。
(……気になるが、呼ばれていない)
つまりは、加わる必要がないということだ。
(だったら、幹部でしかない僕が様子を見に行くわけにはいかない)
「………………気になるが」
欲を鎮めるように頭上の枕を手に取り、ぎゅっと顔に押し付ける。
当たり前だが、息苦しい。
(……………………何をやっているんだ僕は)
こんな行為
キリエはもちろん、カラミアさんにも呆れられそうだ。
(……自主的にでも見回りをするか)
こうして無為に過ごすよりよっぽどいいだろうと判断し、身を起こす。
立ち上がろうとした瞬間――。
「アクセル、いるか?」
「はい」
ドアが開くのと同時に、カラミアさんが現れた。
「寝てたのか」と尋ねられ、首を左右に振り否定する。
「どうしました」
「ちょっとばかし頼まれてほしいことがあるんだが、いいか」
「喜んでっ――あ」
やるべきことができた嬉しさのあまり、声がうわずってしまった。
恥ずかしくなり、「すみません」と思わず謝ってしまう。
「はは、謝らなくていいっての。アクセルは本当真面目だよな」
カラミアさんはくしゃっと笑い、「ついてこい」と言い視界から消えた。
慌ててジャケットを手に取り、追いかける。
(……階下……外へ出るのか?)
銃を取りに戻るべきかと一瞬思ったが、どうやら違うようだ。
(リビングルームで何を……!)
ソファに見知らぬ少女が横たわっている。
わずかに身体が上下に揺れている――つまり、生きている。
(つまり、これは……)
「……………………………………誘拐?」
「なわけねえ……と言いたいところだが、微妙なラインだな」
「微妙、なんですか」
「まあな。小屋にいるキリエの様子を見に行きたいんだ、俺の代わりについててやってくれないか」
「ついてて、とは……ただ待機しているだけでいいのですか」
「そうなるが。他に何する気だ、寝てる相手に子守唄でも歌うか?」
「いえ…………わかりました、ここにいます」
「おう、頼むぜ」
カラミアさんは僕の背中をぽんと叩き、鼻歌を歌いながら去っていった。
鼻歌が聞こえなくなるまで扉を見つめた後、ゆっくり視線を少女へ戻す。
(……………………………………………一体誰だ。何が起こっているんだ)
置いてけぼりにされるのはいい加減慣れているが、
それにしても説明が不足しすぎている。
(あとでちゃんとカラミアさんと……キリエに聞こう)
まずは今を、乗り切らなくては。
(ついててやれと言われても……)
何をしていいのかわからず、とりあえず近くにあった毛布をかけてみる。
(それで、このあとは……………………)
何も思い浮かばず、硬直する。
(……キッチンで甘いものを摂ってくるか)
そうすれば何か、名案が浮かぶかも――。
この場を離れる適当な理由を見つけた僕は、いつもの1.2倍速で退室を試みようとした。
その瞬間――。
「ん、んん……」
僕の声帯とは正反対の声色が耳に届いた。
ごそごそと布の擦れる音。
(非常に……………………マズい)
ついててやれとは言われたが、起きた時の対処法は聞かされていない。
(どうすればいい……殴ってもう一度寝かせるか……?)
迷ってるあいだにも彼女は起き上がり、辺りを見渡している。
幸い、僕に気づいていないようだ。気絶させるなら今だ。
(…………………………………………ムリ)
自己判断による攻撃は、ただの暴力。
加えて、力加減を誤った時のことを考えると怖い。
「――起きたのか」
声を掛けると、彼女は「えっ」と驚き振り向いた。
大きな目がこちらを見ている……やはり、誰だかわからない。
発言されないよう「動くな」とまずは先制。
次に何を言うべきか迷った挙げ句、「呼んでくるから」と部屋を飛び出す。
(『呼びに来い』とは言われなかったが……)
見知らぬ者と同じ部屋に居続けるなど、耐えられない。
(速やかに小屋に移動。カラミアさんとキリエに起きたことを説明。
ついでに彼女の情報を手に入れる……これだ)
「迅速に遂行する」
全力で走りたい気持ちを押さえ、僕は庭にある小屋へと向かった。
<終わり>
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こんばんは、ゆーますです。
毎度ギリギリとなりましたが、
なんとかすべりこみました……!
本当は別のテキストを用意していたのですが
未更新分が2つあるということで急遽こちらに。
※3月・4月も合わせて更新しました
3→4→5の順で読んでいただけますと嬉しいです!
オズマフィアの序盤オブ序盤、
オープニングムービーが流れるあたりの一幕です。
さて、来月はオズの発売月6月!
リモートかスタジオかどちらかまだ未定ですが
ラジオ収録の日程も定まりましたので
楽しみにお待ちいただければと思います。
Switch版の発売ですが、
コロナの影響でCERO審査がずれこんでの延期とのことです。
開発になにかあったわけではありませんので
こちらも楽しみにお待ちいただけますと幸いです
それではよい6月を!
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『初遭遇/キリエ』カラミア・キリエ
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(……似ているといえば、似ている)
カラミアの少し後ろを歩きながら、ぼんやりと思案する。
無駄に広い背中から生えているかのごとく、ぴょんと飛び出す2本の足。
彼が抱えている、正体不明の少女のものだ。
(だけど、強く意識しなければ赤の他人だ。
そもそもドロシーは幼く小さい。そして……)
魔女となった彼女は、自分たちと同様に歳を取ることがない。
未来永劫、別れを告げたあの瞬間――ずっと記憶に焼き付いた姿のままのはずだ。
(同一視しようとしているのが馬鹿らしいことだ。
それなのに……)
違和感が胸を掻きむしる。
忘れたほうが楽だと片隅に追いやったはずの思い出が、半ば強引に湧き上がる。
(姿を変えて現れてくれた、なんて……ありえない)
会いに来たのであれば、あの態度はないだろう。
赤の他人だ。そうに違いない――と、思うべきなのに。
(……このことに関してだけは本当、諦めが悪い)
意地を越えて、自身の存在意義にも思える。
それほど、塔に住まう魔女は特別なのだ。
「屋敷についたらどうする?」
視線だけこちらへ向け、尋ねるカラミア。
「まずは執務室へ。人を払う手間が省けますので」
「了解。……なあキリエ」
「なんでしょう」
「調べた結果、なんてことない普通の領民だったらどうする?
グリムとかアンデルセンとかさ」
「それならそれで構いません。
なぜオズ領にいるのか尋ねる必要がありますけど。
大切なのは、疑問を無くすことです。
『わからない』事象ほど気持ち悪いものはありません」
「そうかね。俺はキリエほど頭がよくないから
理解できないことがあってもさほど気にならないんだが」
「でしょうね。これは馬鹿には理解できない悩みです」
「まーたそういうこと言う」
「慣れっこでしょう」
「まあな」
どうでもよい会話を交わしながら、少しずつカラミアとの距離を縮め隣に並ぶ。
彼に抱えられた少女は、まるで眠っているようだ。
「……なんだ、やっぱ気になるのか」
「やっぱとは?」
「さっきから様子が変だから。
普段のキリエならもっとぐいぐいきそうなのに」
「そんなことありません、至って普通ですよ。
……変なのは彼女の方でしょう。我々を知らないなど、ありえない」
「まあな。他所の国から来たって線も捨てきれないが
だとしてもこんな軽装はありえない」
「カラミアのくせに一人前に推理ごっこですか? 生意気な」
「生意気ってなんだよ、生意気って」
(カラミアの言う通り、異国からやってきた可能性もありますね)
違和感に囚われ、視野が狭くなってしまっている。
正直言って、悔しい。思考において、自分がカラミアに劣るなど。
「カラミア、ビンタしていいですか」
「なんでだよ。嫌に決まってる」
「我儘ですね。では銃でこめかみを撃ち抜くということで」
「余計に駄目だ。なんでそんなことされなきゃいけねえんだよ」
「私がそうしたいからに決まってるでしょう」
「よくも俺に『我儘ですね』なんて言えたなあ、この女王様が。
……さ、そろそろ屋敷に到着だ」
「言われずともわかってますよ。数え切れないほど通っている道ですからね」
帽子を被りなおし、襟元を整える。
解剖とまではいかないが、衣服を脱がせば判明することがあるはずだ。
「彼女は一体どういった方なのでしょう。楽しみですね、カラミア」
<終わり>
2020年3月 限定SS 『初遭遇/カラミア』カラミア・キリエ
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初遭遇/カラミア
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「わ、わからない。私は……」
シーザーに追われていた、謎の少女。
彼女は戸惑いの色を宿したまま、ふらりと意識を失った。
地面に倒れないよう、慌てて抱きとめる。
「お……っと。大丈夫か――いや」
「聞こえちゃいないな」とため息をつきながら、頬を軽く叩く。
「……起きないか、参ったな」
どうしたものかと考えながら、ひとまず地面に横たわらせようと試みる。
(服を汚しちゃマズいよな。あと髪もか)
片膝立ちになり、長い髪をひとまとめに束ねながら彼女の上半身をもたれさせる。
「よし、こんなもんか」
「扱いには気をつけてくださいね。何とは言いませんけど、ふっ飛ばさないように」
「首を? んなヘマするかよ」
「絶対にとは言い切れないでしょう? 百獣の王ライオンさん」
「元、な。今は立派な人間だ……って言うのは、微妙なラインか。
支配者層だしな」
「ええ。我々は不老不死。
被支配者層のなかには一緒にされたくない者もいるでしょう。
……彼女はどうなんでしょうね」
「彼女……このお嬢さんのことか?」
キリエは帽子の縁に手をあげながら、半歩だけ俺に近づくと
気を失ってしまったお嬢さんを見下ろした。
その表情はちょうど帽子に隠されていて見えない。
「どうって。支配者層かどうかってことか?」
「……」
思案しているのか無視しているのか、キリエの返事はなく。
どういうことだよと思いながら、同じく彼女に視線を落とす。
(見分け方とかあったっけ)
長い時間を過ごす中、立場こそ何度か変わったものの
支配者層の数は、増えたことも減ったこともない。
(……匿われてるとか、隠してるとかって話も聞いたことねえし)
「どこからどう見ても普通のお嬢さんだろ?」
「……」
「……なんか言えよ」
「なんか」
「そうじゃなくて」
「煩いですね」
キリエは俺の膝を蹴ると、顔をあげた。
ようやく見えた表情は、いつもと変わらない。
「暴力で返事するな。……何かわかったか、相談役様?」
「外から見ただけでは何とも。脱がせばもっと情報が得られるでしょうけど」
「ここでか? 嘘だろ」
「勝手に妄想しないでください、当然屋敷でですよ。カラミアにそういう趣味があるなら止めはしませんけど」
「ないです」
「ですが、嘆きは存分にさせてくださいね。ボスという立場があるというのに、白昼堂々路上で少女を襲うなんて、哀れですね情けないですね浅ましいですね!」
ぎゃんぎゃんといつもの調子で歌うように罵るキリエ。
周囲の部下や領民も慣れたものだと言わんばかりに微笑ましく眺めている。
「ないつってんだろー。そっちこそ妄想すんな」
「ふふ……では参りましょう」
「当たり前のように、手伝おうとしないのな」
「私に彼女を抱えろと? するはずないでしょう、無理ですし。ま、半分に割ってくれれば可能かもしれませんけど」
「グロいこと言うなっつーの。言ってみただけだ。俺だけでも充分持てる……よっと」
膝の裏に手を差し入れ、足に力を入れる。
予想していたよりも彼女は軽く、すんなりと立ち上がれた。
「余裕余裕。なんならついでにキリエも背負えるぜ」
「おんぶさせてくれと? ふふ……静脈を掻き切られたくて仕方がないようで」
「おっかねえやつめ。それじゃ行くか」
「ええ」
<終わり>
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2020年2月 限定SS 『ホット・バタード・ラム』カラミア ロビン・フッド
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気まぐれに立ち寄ったバーは大通りよりも暗く、ゆったりとした空気が漂っていた。
氷が溶ける音、ほどよく控えめな話し声、椅子を引く音、テーブルに置かれる高価の音。
特別好きというわけではないが、街に溢れる騒音に比べれば嫌いではない。
(ひとり酒の習慣はないんだけど)
今夜はひどく寒く、ここから診療所まで遠い。
一杯飲んだほうが身のためだ。
「ホット・バタード・ラムを」
手袋を外しながら、カウンターにいる店主に注文する。
コートを脱ごうか迷ったが、そのまま椅子に座った。
長居する気はない、ここにいるのはものの数分だ。
「――誰かと思えば、ロビン先生じゃねえか」
かけられた言葉より少し遅れて振り向くと、
「……カラミア」
見慣れた顔の男が立っていた。
カラミア。オズファミリーのボスだ。
「こんなところで会うなんて珍しいな」
「安心していい、すぐに出ていく」
「いや、喧嘩をふっかけに来たわけじゃないんだが」
カラミアは僕の右隣に座ると、トントンと人差し指でテーブルを軽く叩いた。
店主が頷いている。何かの合図らしい。
(隣に座られても……)
特に話題が思いつかず、唇を軽く噛む。
酒が届いていればゆっくり飲むなどして誤魔化せるのに。
(まあ、僕が気遣う必要なんてないか)
勝手に近寄ってきたのは向こうだ。
僕からアクションを起こす義理なんてない。
(……僕なんか、放っておいてくれればいいのに。だから――)
僕は、カラミアが苦手だ。
群れるのが嫌いな僕とはもともと反りが合わない。
誰にでもオープンと言わんばかりの態度が好きじゃない。
手の届く場所に座っているけれど、心の距離はずっと遠い。
「お待たせしました」
「ありがとう」
届いた酒のグラスに触れ、温かさを確かめる。
すぐ喉に流し込むには熱いようで、もどかしい。
(……?)
この店は飲み物が提供されるタイミングで支払いが発生するはずだが
何も言われない。
忘れているのだろうかと財布を取り出そうとしたところ。
「ああいい、俺のおごりだ」
店主からビールを受け取りながら、カラミアがそう告げた。
「おごり?」
「そう」
「どうして?」
「どうしてって」
カラミアは首を傾げ、「おごるのに理由は必要か」と尋ねてきた。
「必要だろう、普通は」
「そうか。そうなのか」
さっきとは逆のほうに首を傾けたあと、
カラミアは「今日出会った記念にってことで」とビール瓶を掲げて笑った。
「はあ」
満足そうな彼は、さぞかし気分がいいんだろうけど。
(……こういうところも苦手だ)
ひねくれた僕は納得いかず、目の前のただ酒を口に含む。
まだ熱かったが、今の自分に丁度いい。
さっさと飲み干して、出ていくことにしよう。
「お仲間は? 一緒じゃないのか」
「まあな。キリエはカジノに行くっつってたし、
アクセルに酒は禁物だ」
「あいつの酒癖はほんっとうに洒落にならない」と話すカラミア。
……ということは、1人で飲んでいたのか。
興味がないから、今まで知らなかった。
「意外だ」
「だろ? あいつ、見た目は酒に強そうなのにな」
「そういう意味じゃないけど……そういうことでいい」
グラスを空にして、立ち上がる。
「先生、もう行っちまうのかよ」
「ああ。今日の礼は診療所で返そう。
怪我をした時はいつでも寄ってくれ。もっとも、そういう事態は望ましくないけれど」
「言えてる。じゃあな、先生」
ひらひらと手を振る彼に軽く会釈し、出口へ向かう。
ドアを開けた瞬間ちらりと振り返れば、彼は楽しげに店主と言葉を交わしていた。
(……1人で飲んでたからといって、孤独ではないらしい)
意外に思った印象を上書きし、バーを後にする。
「飲んで正解だった」
刺すような鋭い寒さが、熱を流し込んだ体に丁度いい。
「……誰かさんみたいに、寒いのを言い訳に酒を飲まないよう気をつけないとな」
ハーメルンの顔を思い浮かべながら、帰路につく。
神出鬼没な彼のことだから
人が行き交っているこの道のどこからか、ひょっこりと出てきてもおかしくない。
診療所に無断侵入している可能性だって否定できない。
(……仕方がないな)
通り過ぎかけた酒屋の前で足を止め、ドアをくぐる。
銘柄を見ず、陳列された瓶を適当に2本選ぶ。
彼の舌は上品ではない、なんだって喜ぶだろう。
(これで、酒がないだの文句は言われない)
今日いなかったとしても、そのうちやってくる。
買っておいて損はない。
(ハーメルンに対しては、過保護かもしれないな)
最初は彼にも苦手意識を持っていたはずなのに
しつこく絡まれているうちに、いつの間にか慣れてしまった。
(……カラミアにも、慣れるのだろうか)
少し想像してみたものの、何も浮かばない。
水と油、とまでは言わないけど、僕と彼はかみ合わせが悪い。
(カラミアを慕う者はたくさんいる。
僕なんかどうでもいいだろう)
たぶん僕には、太陽よりも月がお似合いだ。
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うるう年!! こんばんは、ゆーますです。
ロビンのエピソードを書く機会が控えていて、そのためのリハビリでした。
オズ本編では心を閉ざした、淡々とした秀才系美青年が正解なのですが
その前の時間軸の彼はほんの少し柔らかさが必要なので
さじ加減が難しいですね。
◆ ◆
プライベッターに書き綴ると波紋を呼びそうなので
ここだけの話なのですが
最近さといさんとオズについて話す機会がありまして、
これまでオズが続けられていることをみなさんに感謝しているとともに
コンディションが悪く、デザインがうまく生み出せないことを悔しがっていました
オズは私にとってもさといさんにとっても
「自分たちの考えた最高のものを全力で届けよう」という気持ちで作ったものなので
それを乗り越えるとなると難しいですし、出すからには生半可なものにしたくありません
なので、これからも彼女がベストの状態で臨めるよう待っていようと思います
何年もお待たせしている中申し訳ないですが、
オズを作りたい・続けたいという気持ちは私もさといさんもずっと持っているので
気長に待ってもらえると嬉しいです!
2020年1月 限定SS 『ないしょのバレンタイン』ヘンゼル・スカーレット
こんばんは、ゆーますです
お待たせしました、限定SS更新です!
今回はスカーレットとヘンゼルの組み合わせ、
グリムといえばお菓子だと思ってバレンタインデーを混ぜたのですが
1月分の更新でしたねこれ……忘れていました
楽しんでいただけますと嬉しいです!
仮に置いていた台本はGGR配信おしらせの際
再掲いたしますのでご安心ください!
それでは、GGR・シークレットレイディオ配信までしばらくおまちくださいませ!
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スカーレット「……ヘンゼル、こんなところで何をしているんだ」
ヘンゼル「んー……? ああ、スカーレットか」
スカーレット「そうだが……質問に答えてくれ、ここで何をしているんだ」
ヘンゼル「そりゃ、見ればわかるだろ?」
スカーレット「わからないから聞いてるんだが。
本屋にいるなんて珍しすぎる。読書は苦手だろう?」
ヘンゼル「おいおい、苦手ではないぜ? ただ読んでるとすぐ寝ちゃうだけだ」
スカーレット「それを『苦手』だというんだ」
ヘンゼル「いやいや、苦手ってのは『嫌だ』とか『近づきたくない』とか思うことだろ?
オレ、そういう風に思わないぜ。すぐ寝たい時とかに有効活用してる」
スカーレット「それを読書と読んでいいのか疑問だが……苦手意識がないのはいいことだな」
ヘンゼル「でしょー。で、何? オレに用?」
スカーレット「用ではなく、質問をしたんだ。なぜ本屋にいる?」
ヘンゼル「んんー、言わなきゃダメ?」
スカーレット「……言いたくないのなら、言わなくてもいい」
ヘンゼル「あ、そう? じゃあ言う~」
スカーレット「ノリが軽すぎる……。さっき渋ったのはなんだったんだ」
ヘンゼル「はは、渋ったんじゃなくてスカーレットの反応を見たかっただけ!
こんな風に2人きりで話すことって滅多にないじゃん?」
スカーレット「それはそうだが……? 言われてみればグレーテルがいないな。一緒じゃないのか」
ヘンゼル「おう。今は屋敷でパンの仕込みしてると思うぜ。オレは用事があるからつって抜けてきた」
スカーレット「用事……が、これか?」
ヘンゼル「そうそう、わかってるじゃーん」
スカーレット「何をどうすればそういう解釈になる。全くわかってないんだが……。
いい加減、何のためにここにいるか教えてくれ」
ヘンゼル「いいよ。オレさ、グレーテルにプレゼントを作ってやりたいんだよなー」
スカーレット「プレゼント?」
ヘンゼル「そ。グレーテルが喜ぶならなんでもいいんだけど、何喜ぶかわからないじゃん?
だから女の子が好きそうなもんって何なのか調べにここに来たってワケ!
でもオレ、スカーレットも知っての通りこういう場所無縁すぎじゃん?
どこをどう探せばいいかわかんなくて、かれこれ30分は本棚眺めてる~。あはは!」
スカーレット「そんなにか? プレゼントか……そういうことには僕も疎いから、助けられそうにないな。
本人に尋ねたらどうだ? 相手がヘンゼルなら素直に教えてくれると思う」
ヘンゼル「チッチッチ。わかってねーなぁ、スカーレットは!」
スカーレット「なっ……何がだ」
ヘンゼル「今月の目玉イベントといえば~?」
スカーレット「む……誰の誕生日でもないはずだが……?」
ヘンゼル「はは、やっぱり当てらんないか。バレンタインデーがあるじゃん、バレンタインデーが!」
スカーレット「ああ……そういうのもあったな。販売担当のヘンゼルたちはそういった行事に詳しいだろうが、
僕は集金担当だからな」
ヘンゼル「担当どうのは関係なくて、興味の問題だと思うけどなー。
この時期ってチョコ系スイーツのかきいれ時ですっげー忙しいじゃん?
だからこそ、グレーテルに何かやろうと思ってさ~。バレンタインってそういう日だし!」
スカーレット「……そうか。だったら僕も、何か渡そうかな」
ヘンゼル「グレーテルに?」
スカーレット「いや、ヘンゼルとグレーテル2人に。どちらにも世話になってるし……
バレンタインは『そういう日』なんだろう?」
ヘンゼル「おお、男前~♪ んじゃオレも、スカーレットに何か用意しよっと。チョコ型のダイナマイトとか」
スカーレット「それはやめてくれ……」
ヘンゼル「じゃあビスケット型のダイナマイトとか?」
スカーレット「どんなダイナマイトだ……爆発物はやめてほしい、どうせ使わないから」
ヘンゼル「そっか。スカーレット用のプレゼントを考えるのも難しそうだ! でも――
大切な家族のためのプレゼント考えるのって楽しいよな、相手の笑顔が思い浮かぶからさ」
スカーレット「僕の場合、贈ったものが喜んでもらえるか不安が先立ちそうだが……ヘンゼルらしいな」
ヘンゼル「へへっ。グレーテルほどじゃねえけどスカーレットも後ろ向きだし、
そのぶんオレが前を向いてないとってね~。オレたち3人ぼっちだしさ?」
スカーレット「ああ……うん、そうだな。渡すのはバレインタインデー当日でいいだろうか」
ヘンゼル「ん、オッケー。オレもそのタイミングで渡すぜ! スカーレット何くれるんだろ? すっげー楽しみだ」
スカーレット「あまり期待しないでくれ。どうせつまらないものだろうから」
ヘンゼル「んなことないない、スカーレットが何かくれるってだけでサプライズだし? すっげー楽しみにしとくぜ」
スカーレット「参ったな……はは」
◆おわり◆