St. Valentine's day Short Story 蓮
2013年 2月 14日 (木) キラルくん
※このSSは2月17日までの期間限定公開です。
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[One of the chocolate...蓮]
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「ただいま、婆ちゃん」
仕事を終えて帰宅した俺は、夕飯を作っている良い匂いが漂う中、自分の部屋へ向かった。
「ただいま、蓮」
「おかえり、蒼葉」
部屋に入ると、蓮がベッドに座って雑誌を読んで……いると思ったら、蓮は何故かきちんとした姿勢でベッドの端に座っていた。
雑誌も読んでないし、俺が帰ってくるのを随分前からじっと待っていたように見える。
それに、どこか緊張しているような……?
いつもと違う様子を不思議に思っていると、蓮は俺を見るなりベッドから立ち上がった。
「蒼葉、もうすぐ夕飯の時間だ」
「あぁ、すげーいい匂いしてるもんな」
答えつつ、蓮をじっと観察する。
いつもはまっすぐに俺の目を見てくるのに、あまり目を合わせようとしないし落ち着きがない。
「蓮、どした?」
「……なんのことだ?」
「いや、なんかいつもと違うっつか、妙にソワソワしてるから」
「…………」
蓮は嘘がつけない。
俺の指摘に、すぐにバツが悪そうに俯いた。
「なんだよ、悩み事か何かか? ほら、とりあえず座れって」
俺は上着を脱いでカバンを置くとベッドに座り、自分の隣をぽんぽんと手で軽く叩いて示した。
けど、蓮は俺の隣に座る前に何かを差し出してきた。
「蒼葉……、……これを」
「ん?」
見れば、差し出されたのは手の平に乗るくらいの小さな箱だった。
「プレゼントか?」
「……あぁ」
「なんだろ?」
今日って何かあったっけ?
疑問に思いつつ、俺は少しワクワクしながら箱を受け取って開けた。
箱の中には4粒のチョコが入っていた。縦と横で綺麗に仕切られていて、チョコも可愛らしい。
これってもしかして、バレンタインか?
そういえば、今日は2月14日だ。仕事中や街を歩いてる時はなんとなく認識してたけど、
家に帰った途端にすっかり忘れ去っていた。
問うように蓮の顔を見上げると、蓮は困ったように眉根を寄せていた。
「これ、どうしたんだ?」
「……今日、買ってきたんだ」
「1人で?」
「あぁ」
その事実にちょっと驚く。
同時に、蓮が申し訳なさそうにしている理由も判明した。
蓮は人間の……セイの体にだいぶ慣れてはきたけど、外出する時は念のために必ず俺が同行している。
万が一、急に体が動かなくなったりしたら困るし、蓮は人として知らないこともまだまだたくさんある。
だから細心の注意を払っていたんだけど……。
「すまない……。1人で外出するなと言われていたから、怒らせてしまったかも知れないが……」
蓮が本当に申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。
「でも、今日だけはどうしても1人で外出したかった」
「これを買いに行くために?」
「そうだ。俺は今までずっと、どうすれば蒼葉に感謝の気持ちを伝えられるだろうかと考えていた。それで、今日がバレンタインだと知った。……ただ」
蓮がますます申し訳なさそうに目を伏せる。
「持ち合わせがあまりなかったので、そのくらいのものしか買えなかったのだが……」
……そうか。
普段は俺がずっと一緒にいるから、蓮には何かあった時のためのちょっとしたお金しか持たせてなかった。
そのお金で買ってきてくれたのか……。
「……蒼葉、怒っているのか?」
俺が黙ってチョコを見つめていると、蓮が心配そうに聞いてきた。
その顔へ、俺は自分でもそうだとわかるくらい満面の笑みを向けた。
「いや、全然」
「だが……」
「すっげー嬉しい。ありがと、蓮」
「そうか……」
ようやくほっとしたのか、蓮が深く息を吐き出す。
「チョコレートを売っていそうな店に入ってはみたものの、店内の女性客がみんな……その、どうも俺のことを気にしているようだったので、何か間違っているのではないかと不安に思っていた」
「そりゃあ……、間違っちゃいないけど、まぁ注目はされるだろうな。女の人からチョコを渡す日だし」
女性客だらけの中、男が1人でチョコを買いに行くのはかなりの勇気が要る。
蓮も肩身の狭い思いをしたはずだ。
そこまでして買ってきてくれたんだと思うと、嬉しさの他に言いようのない感情がこみ上げてくる。
「つーかさ、俺、ちょっと考え直さなきゃって思った」
「考え直す?」
「うん。俺さ、お前のこと心配しすぎだったかなって。もちろんまだ心配ではあるけど、でもお前だってガキじゃねーもんな。これからちゃんと、お前のことはお前に任せていかねーと」
「蒼葉……」
俺はゆっくりと箱の蓋を閉めて、立ち上がった。
「これ、ほんとにありがとな。夕飯のあとに大事に食うよ。蓮の気持ち、しっかり伝わったから」
「そうか。蒼葉には本当に感謝している。……いつもありがとう」
「こちらこそ」
お決まりの蓮のセリフを俺が返すと、蓮は少し驚いたように瞬いて、それから嬉しそうに微笑んだ。
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更新日:2013/03/18 · 21:24
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